上総とんび 【無形民俗文化財】

 

※この凧に用いられている図柄は、上総とんび独自のものです。本HPより写真を転写・模写・複製することは固く禁じます。

上総とんび(かずさとんび)

昭和50(1975)年4月28日指定
一宮町一宮 嵯峨野 彰

▼上総とんび(図柄:出生鯉生け捕り、西二枚の完成品)

 

▼製作中の嵯峨野彰氏 

 

 上総とんびは江戸時代、地曳網漁が盛んに行なわれていた頃に作り出されました。漁師が大漁のときに着る「万祝着(まいわいぎ)」という着物と同じ形の凧です。寛政3年(1791)、字東村の重右衛門の創始と伝えられています。以後代々嵯峨野家で一子相伝として伝えられ、現在は10代目です。上総とんびは袖凧の元祖であり、今でも伝統が継承されています。

 竹で骨組みを作って和紙を張り、かつてはクジラのひげを使い、「うなり」と呼ばれるものを作り、独特の音を出しました。現在は代用うなりを用いて「うなり」を張っています。

 現在も江戸時代の木版約40枚、図柄約80種類(木版両面刷り)、下絵約350点が技術と共に伝わっています。「高砂翁媼(たかさごおきなおうな)」という図柄は、玉前神社の社殿・蛙股(かえるまた)に彫り物として残っています。

 かつて九十九里地域では、凧揚げは5月の節句の行事として行なわれていたといいます。今では端午の節句、子どもの誕生、上棟式、さらには社運隆盛を願う人々の運と願望を担っています。

 図柄は干支、武者絵、家紋の系統や日の出の鶴、寿などがありますが、「出世鯉生け捕り」(上記)という図柄が基本です。また、女性が描かれた巴御前の貴重な図柄も存在します。

 

 左上に入れられる「縁起文字」は「船印(ふなじるし:船の持ち主等を示すもの)」と同じ意味を持ち、名前や屋号などの一文字を入れます。

 

▼縁起文字の例「頼」

 

 

                         更新:2019年4月